稀に迷い込まれて読まれるだけなので、読みやすいように古い記事から順に並べることにしました。
定年後の再雇用で来ている同僚が公認心理師の現任者講習を受けるそうです。いまから受けると受けられる国家試験は2022(令和4)年の第5回試験のみ。大博打です。その方は元々は保育士だったのですが、障害児保育の研究会に積極的に出られていて障害者福祉に転身された勉強家です。心理学への興味も以前からあったので、素養はあるはずです。でも、勉強はYouTubeなのだそうで面白いけど覚えられんと言っていました。
有名公認心理師さんのブログに「現任者講習会の受講者は毎年1万人強、不合格者がだんだん滞留してきて概算で毎年5千人ぐらい、そうすると G ルート受験者は毎年 1万5千人ぐらいいるはずですが、どうも5千人ぐらいずつ足りない。こういう人たちは受験をあきらめてしまったのだと思います。(参照)」と書かれていました。現任者講習の受講者数はまとめて発表されてはいないので、毎年各団体が出している定員を加算して修了者の推計をするしかありません。そんなに受講していたのですか。これに関しては現時点で分かる数を調べています(参照)。
以前も書きましたが、公認心理師資格は福祉専門職員配置等加算対象です。ですが既に社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士を持っている人には意味がなく、既に有資格者の割合が一定水準を超えている職場にいてもまた意味がありません(参照)。福祉・介護職員等特定処遇改善加算でも上がっていますが、公認心理師を取るような人の大部分は他の要件を満たしそうな気がします(参照・参照・参照)。公認心理師資格は障害者福祉部門の人たちにとって実利を得られる資格ではありません。
YouTubeで勉強しているのと別の同僚は、現任者講習直後に受験を諦めました。そして、速攻で民間のカウンセリング資格を取っていました。相談支援事業所の人なので主にカウンセリングについて学びたいと言っていたのでとても賢い選択だと思いました。公認心理師だと目的外の勉強もしないといけませんからね。自分のしたいのは何かを考えて無駄のない結論を出して欲しいと思います。
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身内の高齢者が、COVID-19(Coronavirus Disease 2019)の予防接種をしないと言い張っています。あれはRNA(ribonucleic acid:リボ核酸)だから遺伝子を組み替えられるのだ危険なのだと言い、周囲にも受けてはならないと広めているようです。先日のGoogleマップを使えない高齢者と違って、他の人の選択まで支配しようとしています。この説が正しいのかは別にして、こういうのを「老害」と呼ぶべきなのです。
この件に関して政府は、「mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンで注射するmRNAは、数分から数日といった時間の経過とともに分解されていきます。また、mRNAは、人の遺伝情報(DNA)に組みこまれるものではありません。身体の中で、人の遺伝情報(DNA)からmRNAがつくられる仕組みがありますが、情報の流れは一方通行で、逆にmRNAからはDNAはつくられません。こうしたことから、mRNAを注射することで、その情報が長期に残ったり、精子や卵子の遺伝情報に取り込まれることはないと考えられています(参照)」と説明しています。
僕は高校生物レベルの知識しかありませんが、確かにそうだろうなと思います。だってmRNAがなくならないとリボソームで同じタンパク質が際限なく作られて(参照)困るではないですか。一応Wikipediaでも、「翻訳の役目を終えたmRNAは細胞に不要としてすぐに分解され、寿命が短く、分解しやすくするために1本鎖であるともいわれている(参照)」と書いています。「mRNAワクチンについて小6・中学生にもわかってもらいたく「はたらく細胞」の二次創作で説明してみた。」という一連のツイート(参照・参照・参照・参照・参照・参照)が話題になっていましたが、これも「ちなみに遺伝子DNAはCD-Rのようなものでこれの情報をいじることは容易ではありません」「この中の情報が改変されると細胞くんはキラーT細胞さんやNK細胞さんに殺されてしまいます」「ワクチンのmRNAも、自分の核から出たmRNAと同じように、時間が経つと酵素で分解され体内には残りません」と説明されています。リボゾームでたんぱく質を作って以降は高校生物でやらなかったのでとても参考になりました。
しかし土曜日の毎日新聞に、「今世紀初頭にヒトゲノム(ヒトの全遺伝情報)が解読されると、その1割近くがウイルスからもたらされていたことが判明した(参照)」、「生殖細胞に感染したウイルスが、宿主の遺伝情報に潜り込んで一体化したのだ。その一つが、胎盤を作る遺伝子である。私たちはウイルスからもらった遺伝情報を使って、生命をつないでいる(参照)」という記述がありました。毎日新聞論説副委員長の元村有希子さんという方が書かれたようで、2001年以降科学環境部に所属していた科学記者のようです(参照)。北九州市出身で小倉高校から九大教育学部に進んだ方のようです(参照)。理科教育専攻なのかと思ったら心理学専攻らしいです(参照)。まあそれはともかく、ウイルスがDNAを書き換える事はあるようです。そこはちょっと深掘りしないといけないような気がします。
で、その一体化してしまうウイルスの代表がレトロウイルスなるものらしいです。「レトロウイルスは 逆転写酵素という 自らのRNAをDNAに移し替える酵素を有するウイルス(参照)」なのだそうで、「組み込まれたDNAから ウイルスRNAが転写されウイルスが複製され(参照)」るのだそうです。よく分かりませんがこれが外来性レトロウイルスというものらしく、「外から細胞に感染して宿主の体細胞の核内に入り込むウイルスで AIDSの原因であるHIVウイルスが その代表例(参照)」のようです。
一方で、内在性レトロウイルスというものもあり、これは遺伝子が「宿主の精子卵子の核内DNAに入り込み宿主のゲノムの一部となって遺伝情報として子孫に受け継がれ(参照)」るそうで、「子ウイルスを産生せず静かに核内に潜んでいるだけ(参照)」らしいです。ところがこれってレトロウイルスだけではないそうで、「非レトロウイルス」であるヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)に類似したDNA配列(内在性HHV-6)も発見されたようです(参照)。
んじゃあ、(mRNAはすぐに分解されるという話を抜きにして)mRNAワクチンにDNAを書き換えられるぅ~以前に、COVID-19(Coronavirus Disease 2019)に感染してDNAを書き換えられるぅ~。って不安もあり得るわけです。COVID-19もmRNAワクチンも未知の物です。だから共に慎重に対処すべきと考えます。ですがCOVID-19に慎重な人はmRNAワクチンに無頓着で、mRNAワクチンに慎重な人はCOVID-19に無頓着な傾向がありそうに見えます。少なくともワクチンの副作用が他人に感染することはないわけでそれだけでも僕にとってワクチンは検討に値しますが、それは個々人の考え方や環境によるだろうと思います。
とは言え、すべての体細胞が置き換わったり生殖細胞が書き換えられるというのは考えにくいと説明されているようです。根拠はないのですが、筋肉注射なので血管注射に比べて広がりにくい感じもします(個人の感想です)。
なんか何が正しいか分からなかったので、COVID-19が流行りだした頃に参考になった生物学者さんの意見を検索してみました。すると、「ウイルスは自然の一部なので、昔からいるし、これからもいるわけです。だからこれに打ち勝つとか撲滅するなんてことは絶対にできないです。ただ、ウイルスは自然なものだけれども、私たちの身体も自然なもので、外敵に対してそれを制御する免疫システムというものをちゃんと持っている。つまり自分の免疫システムが最高のワクチンなんですね。だから自分が自然に持っている免疫システムと自然物としてのウイルスとのあいだに動的な平衡状態ができて、せめぎ合いがある程度おさまるような状態、つまり新型コロナウイルスがインフルエンザと同じように、ある種の季節性の風邪のように『今年も予防注射を打っておきましょうか』程度のリスクとして受容できるような時点に、何年後かには必ず達する。それをゆっくり待つしかないんですね(参照)」と言っていました。どのくらい待つのかというと、「5年から10年だと思います(参照)」との事でした。
まあ、為政者にしてみると「死ぬ人もいるけど自然に任せて待とうぜ!」とは言えないでしょう。選挙で負けます。僕らのような職種でも、他人に移す可能性がある以上慎重にならざるを得ません。
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知人が公認心理師の現任者講習を受けるそうなので、参考書等を持って行きました。しかし正直厳しそう。第2回試験受験の場合、現任者講習関係で74,536円。国家試験関係で30,030円。登録関係で23,130円と合計で127,696円掛かっています(参照)。現任者講習が一番お金がかかるので、受講したらついついもったいないと試験を受けてしまいがちです。ですが初学者がまともに勉強しようと思ったらこれだけでは済みません。「最後のチャンス!」とか煽っている人もいますが、今から申し込むと試験は1回しか受けられません。まずは過去問を見て判断して欲しいと思います。
そんな中、公認心理師の約71%が臨床心理士を取得している上に、約79%が臨床心理士、学校心理士、臨床発達心理士、特別支援教育士等の「心理専門職4資格」のいずれかを取得しているという驚きの調査結果が出ていました。これは、厚生労働省 令和2年度障害者総合福祉推進事業 「公認心理師の活動状況等に関する調査(参照)」の報告書(参照・参照)によるものです(参照・参照)。いやそんな高率なら知人は落ちるやん。
よく読むとこの調査は回収率38.8%で有効回答率38.7%です。話題になった割に低いと感じました。この割合だとガチ勢が回答したからそういう結果になったんだろうと思いましたが、男女比や年齢構成や試験区分は合格者とさほど違わないようです。むしろ合格者に比べると区分Gが若干多く、区分D1が若干少ない割合なのだそうです。いややっぱり知人は落ちるやん。
また、この調査は2020(令和2)年8月31日時点の登録者を対象にしたもの。2020(令和2)年6月21日に実施予定(参照)で2020(令和2)年12月20日に実施された(参照)第3回試験の合格者は含まれません。
第3回試験の合格発表は翌年2021(令和3)年2月12日と2ヶ月弱後でした(参照)が、第2回試験は2019年8月4日実施で9月13日合格発表だった(参照)ので1ヶ月強。登録までに2~3ヶ月掛かる(参照)事を考慮すると、なぜこの時期に調査をしたのかよく分かりません。
それはともかく、合格者数にしても受験者数にしても第1回試験は桁違いの数です。第1回合格者は28,574(27,876+698)人(参照・参照)なのに対して、第2回合格者は7,864人(参照)。この調査でも有効回答13,688人のうち10.506人の76.8%が第1回合格者(参照)で占められています。直接比較はできませんが、第1回受験者36,103(35,020+1,083)人のうち臨床心理士は24,804人(68.75%)と大多数を占めていて、教員免許保有者8,957人(24.83%)、精神保健福祉士2,768人(7.67%)、臨床発達心理士1,700人(4.71%)と続いています(大学教員は資格ではないので除く)(参照)。
教員免許は文系出身者なら持っていてもおかしくないものですし、精神保健福祉士は公認心理師発足前に心理職がよく取らされていた資格のようです。複数回答なのでその2つは臨床心理士と被っている人も多そうな資格です。それに対して第2回受験者は16,949人。桁は違いませんでしたが半分以下です。保有資格で見ると教員免許が4,480人(30.57%)。臨床心理士が3,900人(26.61%)。精神保健福祉士が1,817人(12.40%)。社会福祉士が1,667人(11.37%)。保育士が1,016人(6.93%)と続いています(参照)。第1回で受験した24,804人の臨床心理士に比べるとこちらは本当に桁違いに少ないです。
臨床心理士は1988年12月から2018年4月1日までの間に34,504人が認定され、2018年4月1日現在の有資格者は32,354人だそうです(参照)。結構な割合で第1回で受験した事が分かります。毎年臨床心理士有資格者が増える事を考慮しても、第3回から第5回試験までは臨床心理士の割合が下がると予想されます。
その割に第3回試験の合格率は53.4%と第2回の46.4%を上回っていました。Eルートの受験が始まったからではなく、Gルートの合格率も41.8%から50.0%に上昇しています。受験者の自己採点の結果からは「問題の難易度は少し上がっているかもしれないが、おそらく第2回よりも若干合格率が高くなっていると考えられる(参照)」と分析されているものの、問題自体は「難易度は確実に上昇し続けている(参照)」とか「第3回試験は、第1回追試・第2回試験とほぼ同程度の難易度(参照)」と分析されているので、問題が易化したとは考えにくいです。これで合格率が上がったのは、受験対策の精度が上がったからなのでしょうか。そうだとしたら知人もちゃんとお金を掛けて勉強すれば受かるかもしれません。
今回の調査は、いわゆる「ガチ勢」である第1回合格者が調査対象の大部分を占めていました。そのため、第3回が終わった現時点ではまた違う結果が出る可能性もあります。Gルートが終了した第5回の後に出来ればもう一度調査する必要があるのでしょう。ただその時点の割合も一時的なものなので、それ以降も継続して調査していく必要があると思われます。
ちなみに現任者講習ですが、「講習会の内容は必要な水準を満たすための補完的なものとする。(参照)」そうで、よく思い出すと内容も確かに「①公認心理師の職責に関する事項」「②公認心理師が活躍すると考えられる主な分野(保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働分野)に関する法規や制度」「③精神医学を含む医学に関する知識 」で心理学はびた一文やりません(参照)。現任者講習の申込サイトでは試験対策はやりませんよ的なことが書かれていますが、試験範囲はもっともっと広いと予めアピールしないといけないんじゃないかと思います。
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「私がシンポの場で『危険』と言ったのは、当時『威嚇と暴力』を主たる教育手段とする養護学校にいて、そこの先生方が『おっ、人間関係は最後でええんやな。なら威嚇でも暴力でも正しい行動にまず結びつけることが大事やな』みたいに思われたらいかんよな、って思いだったのだけどね。(参照)」というツイートを見ました。話題の発端のブログ(参照)を読むと、TEACCH(Treatment and Education of Autistic and Comunication handicaped CHildren)、ABA(Applied Behavior Analysis:応用行動分析)、受容的交流療法の専門家が揃ったシンポジウムの際にTEACCHの専門家が「人間関係は最後に考えます」と話したという話からのもののようです。
ご本人が言うにはTEACCHでは「自閉症の特性から始まって、個人の特徴を考え、と順番に考えていきます。で、やりとりする方法を考え、やってみる。ひょっとしたら、はなから人間関係なんて考えてないかもしれない(参照)」けれども「結果的には人間関係は良くなる(参照)」「人間関係なんて言葉には出さないけど、一番人間関係を良くしようと思ってるかも(参照)」と筆者は考えていらっしゃるようです。確かに僕の師匠にあたるTEACCHを学んだ方は、利用者さんとの人間関係を大切にしているように見えました。
僕が障害者福祉の世界に入ったのは2003年5月。自閉症の方を対象にしたグループホームです。30歳を過ぎて分からないことばかりの出発でした。周りの先輩方から色々教えて頂き、丁寧に育てて頂いたと感謝しています。自閉症について知れば新しい支援が見つかるかもしれない。当時はそんな期待はありました。
長い間働いているうちに、職場の主流がTEACCHからABAに移ってきました。と言うより、「自閉症者は柔軟性に乏しく、分析的情報処理や聴覚刺激の処理が苦手で、感覚刺激入力の調整に異常があるが、視覚的刺激の処理に強みを示し、長期記憶は優れている。自然に身につく人間関係、文化的常識、言葉(コミュニケーション)が身につかない(参照)」ために、(視覚的・空間的・時間的)視覚的構造化、ルーティン、ワークシステム、具体性を持たせる、環境を整える等の手法で「状況を理解し、見通しが持ちやすくなることで、混乱や不安が減少し、安心して過ごせるようになる(参照)」というTEACCHを取り入れた支援方法が当たり前になったのだと思います。
ただ、違和感を感じることもありました。支援の結果がなかなか般化されず、数年後に同じ支援をまた繰り返す事もありました。僕らは家庭のせいにしたり同じ支援が徹底されていないからだと考えたりしていました。でも不可逆的な結果が残る事例もありました。その違いは何なのだろうと考えていました。
そもそも手法自体僕が入る10年前からあまり変わっていないらしい事も分かり、僕は、心理学を学び直す事にしました。そんな中気付いたのは、「受容」という方法へのアレルギーが存在するという事です。
受容と共感による要支援者理解は、対人援助の少なくとも初期では一般的なものだと考えています。冒頭のツイートへの反応でも「自閉症の支援に関わらず、『人間関係』は”支援の足場のようなもの”と捉えています。 足場がしっかりしてるところとそうでないところでは、結果は変わって当然でしょう、と(参照)」と反応されており、これは受容と共感によるラポール(rapport)形成の重要性を指摘しているのではないかと理解します。
なぜ、「受容」へのアレルギーや批判が生じているのか正直分かりませんでしたが、この元記事(参照)のブログを読んでようやく分かりました。受容的交流療法というものがあったんですね。
調べてみると受容的交流理論とは、「子ども(利用者)の表面に現れる問題となる態度や行動を見ただけで一方的に排除したり否定したりせずに、その奥にあるその人の心の動き(行動や態度の元になっていること、『どうしてその人はそうせざるを得なかったのか』ということ)を考え、まずは受け入れ、共感し、理解することから始ま(参照)」るそうで、対人援助としては極めてオーソドックスに見えます。恐らく入職時に先輩の一人が教えて下さっていた事はこういう事だったのでしょう。
手法としては「相手への好意を持ち続け、『人間的な触れ合い・交流』を積極的に展開していくことで、触れ合いや交流の大切さを根気よく分からせていき、また、周囲の状況や人との関わりを主体的に行えるように自我の働きを育んでいきます。 それは、相手の立場に立った心理的な理解を重視し、人間関係の関わりを通して、本人の主体性の発揮を促し、安定した生活や行動の獲得と社会参加を目指すものです。(参照)」と書かれていますが、実際の支援には「スケジュールの提示も、先行刺激の分析も、場所をわかりやすく見せることも(参照)」ないらしく、「TEACCHが実践してきた視覚化や構造化などを参考にしてきた身には、子どもたちが辛すぎる状態のように思え(参照)」るそうです。
つまり、「行動や態度の元になっていること」の理解が属人的であり、TEACCH等が取り入れた新しい知見を取り入れていなかったという事なのでしょう。また、属人的でありエビデンスを得にくい点は、受容的交流理論を唱えた石井哲夫さんも意識されていたようです(参照)。
受容的交流理論はある意味一般的な考え方はだと思いますが、「受容」や「共感」の際にTEACCHやABA等の成果を踏まえて新しい知見を取り入れる必要があったのでしょう。また、臨床心理学の知見(非言語的コミュニケーション方法等)などを用いて「受容」や「共感」を要支援者に伝える技術も確立する必要があったのだと考えます。
そういったことからTEACCHをやられている方の中には受容的交流理論への複雑な思いがあるようです(参照)。僕の師匠にあたる方にも「古い支援」に強烈な対抗心を隠しきれない方もいらっしゃいました。僕もこういった支援はどうなんだろうと思います。でもそこまで意識するほどの勢力であったのかは疑問があります。僕の勤務先は1980年代から自閉症児の療育をしていたようですが、名前を聞いた事がありませんでしたし。
支援例はどうかと思いましたが、だからと言って基礎である「受容」とか「共感」とか「ラポール形成」とかを蔑ろにするのはどうかと思います。最近「あくまで子どもの現状への深い理解と共感の上にたって、少しずつ課題を設定し、方向付けをしていくのである。いいかえればこうあるべきだという私たちの側の規範を性急に押しつけないのである(参照)」、「一人の同等の価値を持つ人間として接し、子どもの福祉に反したり、抑圧的な方法で子どもを変えようとしないのである(参照)」という思想が否定され、「障害者は社会に合わせるべきだ」という考え方が強くなっているように思います。以前より地域生活や社会参加や一般就労が当たり前になったという事で良い事だとは思います。ですが僕らは社会と要支援者の間で煩悶するべき代弁(advocacy)の役割も持ち合わせているのではないでしょうか。
TEACCHの支援手法やABAは、行動主義心理学の影響を強く受けています。ですから「変わることだけを目標にするのではなく、子どもの内面の発達に目を向け(参照)」という受容的交流理論は「非科学的」で相容れないものなのでしょう。両者は基本的に行動にだけアプローチするのでとても分かりやすい。一般的には誰がやっても同じ結果が出ることも期待されます(人間は複雑なのでそう上手くはいきませんが)。一方で行動を変えることで内面も変わる可能性はありますが、目的ではありません。
科学性と全体性の相剋が心理学史のテーマだと個人的に思っています。だだそれはただ対立しているわけではなくその中から新しいものが生まれてきたりするのではないかなと最近は考えています。そう考えると受容的交流理論がこのまま埋もれてしまうのは惜しいことだなと思いました。多くの方は最近の知見を取り入れながら支援されているようですし。とりあえず機会があれば本(参照)を読んでみたいと思います。
自閉症児に対する療育に於いて、応用行動分析モデル、コミュニケーションに焦点を当てたモデル、多面的発達モデルに分けて効果を検証した研究(参照)がありました。それによると、「①ABA による早期療育は ASD 児の言語発達を促進する、②ABA 療育時間(個別)と ASD児の言語発達の促進は関連する、③療育の種類にかかわらず、早期の療育開始は ASD 児の言語発達を促進する、④療育の種類にかかわらず、個別療育の時間数は ASD 児の言語発達を促進することが明らかになった(参照)」のだそうです。成人に於ける研究は見つけられませんでしたが、この世には僕らの知らない支援方法があるのかもしれません。
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Pornhubというサイトを中心に動画配信されているえむゆみというカップル(参照)がTwitterを中心に批判されているようです。公認心理師関連のツイートで知りました。
それというのもこのお二人が出会ったきっかけが「僕がカウンセリングとかの仕事をしていて、そこでお客さんとして来たあゆみと意気投合して(付き合った)みたいな」事だったようで、これが心理職の職業倫理上よろしくないのではと批判されたようです(参照)。
カウンセラーがクライエントとカウンセリング以外の関係を持つ事を多重(二重)関係と言い、臨床心理士の場合は臨床心理士倫理綱領第5条で「臨床業務は自らの専門的能力の範囲内でこれを行い、常に来談者が最善の専門的援助を受けられるように努める必要がある。臨床心理士は自らの影響力や私的欲求を常に自覚し、来談者の信頼感や依存心を不当に利用しないように留意しなければならない。その臨床業務は職業的関係のなかでのみこれを行い、来談者又は関係者との間に私的関係及び多重関係をもってはならない。」と二重関係を禁止し(参照)ています。
産業カウンセラーの場合も産業カウンセラー倫理綱領第16条で「産業カウンセラーは、専門家としての判断を損なう危険性あるいはクライエントの利益が損なわれる可能性を考慮し、クライエントとの間で、家族的、社交的、金銭的などの個人的関係およびビジネス的関係などの二重関係を避けるよう努める。」と二重関係を持たないよう促し、さらに第16条2に置いてはさらに「産業カウンセラーはクライエントとの間で性的親密性を持たないよう努める。もしそのような可能性が生じた場合は、カウンセリングを中止するか、他のカウンセラーに依頼する。」と性的親密性を持たないよう特に促しています(参照)。
公認心理師の場合は任意団体の日本公認心理師協会の倫理綱領の8で「会員は、心理支援にあたって、原則として、要支援者等との間で専門的支援関係の範囲を超えた関係を結ばない。」と会員の多重関係を禁止しています(参照)。また、(通報する手段はまだありませんが、)「公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない。」という公認心理師法第40条に違反する可能性もあります。
ところがこのカップルがこの件に関する説明動画をYouTubeに上げていました(参照)。Twitter(参照)で話題になっているので、ツイート(参照)でYouTube(参照)に誘導しています。Twitterで直接反応しないのが若いなあと妙に感心しました。
その動画によると、男性の当時の仕事はコンサルタント業であって心理カウンセリングではなかったとの事です。話の内容からすると心理カウンセリング的なことをして営業する手法もやっていた集団に属していたようです。法的に危なそうな臭いもしますが、ご本人が反省していらっしゃるようなのでそこを責めている方はいらっしゃらないようです。
そもそもカウンセリング自体を規制する法律はありません。公認心理師法(参照)は第44条で「公認心理師」、第44条2で「心理師」という名称の使用を規制しているだけ(名称独占)です。つまりカウンセリング業務をやるのは自由ですし、「カウンセラー」や「心理士」を名乗るのも合法です(そもそも公認心理師=カウンセラーではないですし)。
そして、カウンセリングは心理カウンセリングとは限りません。カウンセリングファーストと言っていた化粧品会社もありましたし。
そもそもCounselingはラテン語のconsiliumに由来するそうで、「ともに考慮すること」を表しているそうです。そしてcounselはtake counselで「相談する・協議する」という意味をもち、give counselで「意見を述べる・助言する」という意味をもつのだそうです。英訳の旧約聖書では「助言者」をcounselorと訳し、counselを賢者の「勧め」と訳していたそうで、知恵者が行う「相談」や「助言」を表すとも意味するとも言われるようです(参照)。
カウンセリングが「科学的基礎のある働き」になったのは1909年。職業指導(vocational guidance)の創始者と言われるパーソンズ(Frank Parsons,1854.11.14-1908.9.26)の書いた職業の選択(Choosing a Vocation)という著書であるとされているそうです。彼は①個人の特性・特徴の発見,②職業に必要な能力の分析,③個人と仕事の適合という3要素の特性因子理論を唱えたそうです。キャリアカウンセリングの方が先だったんですね(参照)。
「心理学に基づいた専門的行為」という意味で使われたのは1938年。パターソン(O.G.Patterson,?-?)とシュナイドラー(G.G.Schneidler,?-?)とウィリアムソン(Edmund Griffith Williamson,1900.8.14-1979.1.30)が書いた学生ガイダンスの技法(Student Guidance Techniques)が最初であるとされているそうです(参照)。ウィリアムソンは翌1939年に学生カウンセリングの方法:臨床カウンセラーの技法マニュアル(How to Counsel Students:A Manual of Techniques for Clinical Counselors)という本を著したそうです。彼はパーソンズの理論の流れを受け継いでカウンセリングを理論化した人だそうで、カウンセリング、カウンセラーという用語を使い、特性因子理論に基づく学生支援論を展開したようです。彼はカウンセリングを分析段階、統合(総合)段階、診断段階、予後段階、処置(カウンセリング)段階、観察(フォローアップ)段階の6段階に分けたそうです(参照・参照)。
そして1942年にロジャーズ(Carl Ransom Rogers,1902.1.8-1987.2.4)がカウンセリングと心理療法(Counseling and Psychotherapy)を出版しました(参照)。こうして見ると、カウンセリングって多義的な言葉なんですね。
法的に危なそうな仕事が自分達と同じ名前で呼ばれるのは正直腹が立つと思います。しかしそれは違法でもありませんし言葉として間違っているわけでもありません。公認心理師だけどカウンセラーではないので気楽な意見ですみません。
Emacs | 59.6MB |
---|---|
Vim | 9.09MB |
Visual Studio Code | 76.2MB |
Brackets | 77.1MB |
Atom | 193MB |
gedit | 77.4 MB |
参照)。(TeraPad | 776.4KB |
サクラエディタ | 5.31MB |
TATEditor | 15.1MB |
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以前(参照)、公認心理師の英語訳はCertified Public Psychologist(CPP)らしいと書いたのですが、どうも確定はしておらず、公認心理師のくせに公認された英訳はないようです。
例えばこちらのページ(参照)では、Certified Public Psychologist(CPP)説とCertified Psychologist(CP)説を紹介しており、こちらのページでは(参照)Certified Public Psychologist(CPP)説とLicenced Psychologists(LP)説を紹介しています。
CPPは日本公認心理師協会(Japan Association of Certified Public Psychologist・参照)も公認心理師の会(Japanese Society of Certified Public Psychologist・参照)も英文名称やドメイン名に採用しているようで、デファクトスタンダードっぽいです(参照・参照)。Certifiedは実用英検の合格証に書かれていた記憶がありますが、「認定された」という意味のようです。Certified(認定された) Public(公の) Psychologist(心理学やってる人)で公認心理師という事のようです。公認会計士がCertified Public Accountantと訳される(参照)ようなので、その点でも座りが良いかもしれません。
そこからPublicを取ったのがCertified Psychologist説。こちらは「公認心理師のための説明実践の心理学(参照)」という書籍の表紙に書かれているそうです(参照)。ただし、認定心理士がCertified Psychologistと訳されるらしい(参照)のと、臨床心理士がClinical Psychologist(CP)あるいはCertified Clinical Psychologist(CCP)と訳されるらしい(参照)ので、紛らわしいかもしれません。
ちなみにイギリスには名称独占の国家資格としてChartered Psychologist(認定サイコロジスト)というものがあるそうです(参照)。Charteredは「チャーターした」とか「貸し切りの」という意味の他に、「特許を受けた」とか「公認の」とか「世間に公認された」という意味があるそうです。意味的にはちょうど良さそうですが、こちらも略称がCPだと何が何やら紛らわしそうです。
てか、今まで認定心理士と臨床心理士は略称ではCPでごちゃ混ぜだったんかい。確かに認定心理士と臨床心理士が被ることはないと思いますがなかなかおかしな話です。
それにCCPとCPPでも充分に紛らわしいです。そう考えるとLicensed Psychologist(LP)ってのは分かりやすそうです。これは、日本心理学諸学会連合が公認心理師科目の英語表記(参照)として仮に訳したもののようです(参照・参照)。仮訳っぽいしレコードや録画モードっぽいしであまり普及はしなさそうですが。
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(C)Therapie 2021-